【イベントレポート/2023.10.23~29】ギャラリーから始める「性の健康と権利」2023秋

性の健康イニシアチブは、東京都豊島区の「豊島区SDGs特命大使」としても活動しています。このほど、特命大使としての活動の一環として、区内のギャラリー(画廊)を1週間お借りして、「写真の展示」「ワークショップ」「トークイベント」「物販」を組み合わせたイベントを初めて開催しました。

お借りしたギャラリー
ギャラリー&クラフト 杜
 東京都豊島区巣鴨1-3-20(JR山手線・巣鴨駅南口から徒歩5分)
 Google map⇒ https://maps.app.goo.gl/wp5YW1YJiMzYWEWq7

企画の経緯

性の話は何となく敷居が高く感じられます。一方で、生きることに直結する話題であり、知っていれば生きやすさが変わる知恵が隠れているのも性の話です。学校の授業で習う、どこかの会議室で開催されている勉強会にわざわざ足を運ぶ...そういった敷居の高い感じではなく、フラッと入って「アカデミックだけどカジュアルに」「専門的な話題だけど、堅苦しくなく分かりやすく」性に関する話題に触れられる場所があったらいいな...という構想は数年前からありました。その構想をもとに今回この企画の実現にこぎつけました。

写真展

キーワードその3とインスパイアされた写真

先ごろ性の健康イニシアチブが発表した「健康的な人間関係のための10個のキーワード」を1つ1つ言葉で展示し、そのキーワードにインスパイアされた写真を掲示するという形式の写真展を開催しました。

会期中毎日13:00~18:00で展開しました。性の健康イニシアチブの広報を見てきてくださった方はもちろん、通りがかりに立ち寄ってくださり新たな出会いとなった方もいらっしゃいました。

ワークショップとトークイベント

外部の講師の方やファシリテーターの方々もお呼びして、様々なテーマのワークショップやトークイベントを行いました。

「自立した主体者を育てるための性教育」とはどういうことなのかが分かります

2023102319

初日(10月23日)19:00~、イベントのオープニング挨拶に代えて、代表・柳田がお話しました。

今回のイベントの開催の経緯や開催に対する想い、モチーフとなっている「健康的な人間関係のための10個のキーワード」について、最近30年の日本の性教育や性に関する話題の進展の歴史、2023年の時事話題に対する考え、それに対して今何が必要で、どんなことを人が心がけていくと生きやすい社会ができるか、などについてお話し、後半は参加者の方々とのフリーディスカッションの時間も設けました。

性交痛から考える「大人になっても使えるホンモノの性教育」

10月24日19:00~、性交痛メディア「ふあんふりー」編集長・小林ひろみさんをファシリテーターにお招きして行いました。

性交痛に悩んでいる大人のみなさまの声をたくさん聴いてきた小林編集長が「性教育の中でこういう情報を発信してくれたら、性交痛との向き合い方が変わったのに。あるいは性交痛に悩むことはなかったのに」と感じている事柄について、性教育に取り組むみなさまと考えることを趣旨としました。

当日は少人数の参加者とざっくばらんに語り合いができた様子で、充実した時間になった模様です。

包括的セクシュアリティ教育の実践で身体的な話題以外も語れるようになります

10月25日13:00~、性の健康イニシアチブ・代表の柳田がワークショップを行いました。

近年日本でも「包括的セクシュアリティ教育」の認知度が少しずつ高まっていますが、その中では「人権」と「ジェンダー平等」に基づくこと推奨されており、最初に学ぶのは「人間関係」「尊厳」といったものであることが示されています。

性の健康イニシアチブは、「社会学」や「心理学」をはじめとした人文社会科学の視点から性の健康と権利について追究しています。「人間関係」「尊厳」「人権」といったものは、人文社会科学領域で様々な議論や検討がされてきた事柄です。それらについて参加者の方々と考えるワークショップになりました。

*包括的セクシュアリティ教育
「人権」と「ジェンダー平等」に基づいて複合的な視点から推進される性教育。UNESCOを中心とする国連機関が取りまとめた『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』という書籍がその手引書のような役割を果たしている

カラダと社会運動 脱ぐ台湾人・脱がない日本人
~台湾の性の事情やプライドパレードのことなどが聞けます~

10月25日19:00~、大阪公立大学人権問題研究センター特別研究員のほか、関東の複数の大学で講師をされている劉靈均 (Ariel Ling-chin Liu)さんをスピーカーに招いてトークイベントとして開催しました。

劉さんはカラダと社会運動の関係を専門とする研究者です。

●日本のAVは台湾でどう受け止められている
●台湾の同性婚事情
●台湾のプライドパレードについて
●日本のプライドパレードに思う違和感:「なぜ日本のパレードは脱がないのか」

これらについて語ることを通して、台湾の性に関する事情を伝えるとともに、台湾での経験からみる日本への違和感について伝えてもらいました。

10名以上の方が集まり、大学のゼミのような活気のある時間でした。

自分と他人のボディ・イメージを考えることを通して、従来の男性らしさ/女性らしさを見直して、対人コミュニケーションも変わります

10月26日13:00~、社会学者のミカロヴァー・ズザナ(Michalová Zuzana)さんによるワークショップでした。

ミカロヴァーさんの専門分野である「ボディ・イメージ」「ジェンダー」「男らしさ・女らしさ」「コミュニケーション」といったものを社会学の視点から取り上げてもらいました。

性のことにも生き方にも迷いや遠慮がなくなります!

10月26日19:00~、産婦人科医であり、日本性科学会副理事長、性の健康世界学会(WAS)理事である早乙女智子さんによるトークイベントでした。

「普通」というものは実はなく、自分が選ぶことが大事、という力強いメッセージが繰り返され、聴いた人一人ひとりが大変に元気をもらえる時間になったようです。

「今まで悶々としていたことがスッと腑に落ちた」といった感想もありました。

暴力やハラスメントのことが基本から分かります

10月27日19:00~、NPO法人エンパワメントかながわの阿部真紀理事長によるトークイベントでした。

阿部さんが2018年に出版した『暴力を受けていい人はひとりもいない』の内容を紐解きつつ、子ども達にどのように権利や暴力について伝えて来たのか、そもそも権利や暴力とは何なのか、ということをとても柔らかく温かく伝えてくれました。

後半は、性の健康イニシアチブの柳田との対談のような形で、健康的な人間関係について語りました。

参加した方にとっては、自身の過去の経験や職場でのこと、子育てのことについてなど、様々なことに想いを馳せる時間になったようです。

大丈夫じゃなくて大丈夫 ~30代女2人組が日々のもやもやを語り合うpodcast 公開収録

10月28日19:00~、Podcast番組「大丈夫じゃなくて大丈夫」の公開収録を行いました。

番組情報
“立場は違っても、女同士だからこそ分かり合える話ってあるよね。”
 大学の同級生の30代女2人組が、日々のモヤモヤを語り合い、笑い合い、
 解決したりしなかったりしながら、明日のエネルギーを得る番組です。


この日に収録された番組は以下から聴くことができます(タイトルをクリックすると外部サイトに飛びます)

Ep.11【10/28公開収録①】セックスしたくないとき、断ってる?

Ep.12【10/28公開収録②】社会人になってから友達が減ったような気がする…

ホルモンを味方につけて人間関係を円滑にする方法が分かります

10月29日13:00~、薬剤師でありホルモン専門家の岡下真弓さんによるワークショップを行いました。

「ホルモンによって体調が左右される」ということを出発点に、自分の身体との向き合い方について教えてくれるワークショップでした。

忙しい現代人、無理してしまう現代人だからこそ、自分の身体を顧みる時間が大事。そうすることでパワフルな活動を続けられるし、人との付き合い方も安定する。そのための知識やちょっとした技術を教えてくれる時間になりました。

書籍の即売

今回のイベントでも、性の健康イニシアチブがオススメする書籍を即売を行いました。

興味を持って買って下さる方が多くいらっしゃいました。


性の健康イニシアチブがオススメしている書籍の一覧はこちらからご覧いただけます。

まとめ

ギャラリーを借りてイベントをすることで、街行く人がフラっと立ち寄ってくれて、性の健康に触れるきっかけを作れるのではないか?というアイデアは何年も前からありました。コロナ禍で実現できなかったこの企画を今回実現することを嬉しく思います。これからも様々な改良を重ねて「ギャラリーから始める性の健康と権利」を実施していきたいと思える1週間でした。ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました。