健康的な人間関係のための10個のキーワード

性の健康イニシアチブは、人間関係・尊厳・権利をはじめ、人文社会科学分野で深められてきた言葉や知見を頼りに、性の健康と権利について追究している組織です。

その取り組みの結果から、人間関係を改善することが、性の健康に関する課題や問題の多くを改善することにつながると考えています。

そこで、健康的な人間関係(=対等な人間関係)の合言葉として、「私もOK、あなたもOK」という言葉を前面に押し出して、人間関係についてみなさんと考える企画も開催してきました。

今回、「私もOK、あなたもOK」な人間関係=健康的な人間関係=対等な人間関係 を実現するための10個のキーワードを発表することにしました。

バウンダリー
1 「私は私。あなたはあなた」。まず「私がOK」から始めよう
2 できないことを助けてと言えるのも生きる力
3 自分と他人の区別をつけて、機嫌よく過ごしましょ

寛容+対話
4 嫌だと断ることも大事。嫌なことを断れる自分に誇りを持って
5 「嫌なものは嫌」相手の「嫌だ」を大事にすることは、相手を大事にすること
6 「あの人に困らされまくる…」実はその人が困っている人なのかも

尊厳
7 社会の鎧をおろしたら、誰しも生身の人間
8 どんな私も大事な私。毎日胸を張って生きよう
9 大事な私。大事なあなた。誰も否定できない

権利と責任
10 私は何だってできる。その責任を引き受ける限り

私たちは、「私もOK、あなたもOK」な人間関係のためには「バウンダリー(自分と他人の境界線)」「寛容+対話」「尊厳」「権利と責任」という4つが不可欠であると考えています。その4つをどのように理解して日々の行動に落とし込めばいいのかを、10個の短いセンテンスにしたものが、「健康的な人間関係のための10個のキーワード」です。順に紹介します。

「私は私。あなたはあなた」。まず「私がOK」から始めよう

「私もOK、あなたもOK」は、私とあなたが違う人間であると認めるところから始まります。また、関係性の中で、相手の事情に合わせる以前に、まずは自分自身がOKかどうかについて最初に考える必要があります。

OKとは、(その相手との関係性に関して)我慢をしていない、違和感がない、心地よい、ということを指しています。

できないことを助けてと言えるのも生きる力

人間誰でも、得意と不得意があります。不得意なもの、苦手なもの、できないものを、自分ひとりで抱え込まないで「助けて」と言うことは、ダメなことでも変なことでもないです。「助けて」と言えることはすごいことでもあります。

自分と他人の区別をつけて、機嫌よく過ごしましょ

「自分と他人は別の人だから、自分の思った通りに他人は動いてくれない」という前提で暮らしていると、人間関係のことで悩むことが少なくなります。「あの人がこれをしてくれないから自分は機嫌が良くない」となると、それは相手に感情の主導権を握られていることになります。感情の主導権を握られることは、人生の主導権を握られることでもあります。

嫌だと断ることも大事。嫌なことを断れる自分に誇りを持って

相手からの要求に「嫌だ」「NO」というのは誰でも言いづらいものです。でも、本当に良い人間関係は、「嫌だ」「NO」も言える関係性&受け入れられる関係性です。そういうことを言える自分や、言うことのできる関係性を誰かと結んでいる自分に誇りを持っていいです。

「嫌なものは嫌」相手の「嫌だ」を大事にすることは、相手を大事にすること

※ひとつ前の「嫌だと断ることも大事。嫌なことを断れる自分に誇りを持って」が、自分が「NO」を言う側の話だとすれば、こちらは自分が「NO」と言われた場合の話として理解すると分かりやすいです。

大好きってしつこくしないことです。誰かを大好きになることは、相手の「嫌だ」「NO」を受け止めることでもあります。一方的で力づくの関係性ではなく、相手とふたりで関係性を作り上げていくことで、強い信頼で結びついた関係性が出来上がります。その過程では「嫌だ」「NO」と言われる場面もあり得ます。それを汲み取れるのも、相手を大事にしていればこそです。

「あの人に困らされまくる…」実はその人が困っている人なのかも

誰かから嫌がらせをされる。誰かから「そんなことされたら困るんですが...」というようなことをされる。なぜその人はそんなことをしてしまうのか?実はその人自身が何か困り事を抱えているのかもしれません。そういう構造に気付くと、物事の捉え方やその相手の見え方が変わるかもしれません。

社会の鎧をおろしたら、誰しも生身の人間

社会学の言葉に「役割期待」という言葉があります。「このくらいの年齢の男性は、こういうふうに振舞うべきだ」というようなものです。誰にでも、「自分は本当はこうありたいのに、こういうふうにするべきだ、と強制されてしまっている...」と感じるようなことが、多かれ少なかれあるものです。

「本当はこうありたい」と「こうであるべき」を自分の中で整理して生活しつつ、自分がホッとできる場所では自分の過ごしたいように過ごすのが人間だと分かっていれば、「この人にもきっと色々な苦労があるんだろう」と相手への想像力を働かせて相手を尊重できるようになります。

どんな私も大事な私。毎日胸を張って生きよう

どんな人も、色々なものに影響を受けて「自分はもっとこうであったら...」「これができない自分はダメだ...」と感じてしまうことがあります。けれども本来は、生まれてきて、今日自分がこうであることだけで、もう完璧なのです。

何かを達成できて初めて素晴らしい人間になる人は本来おらず、その人が生まれてきてその人でいるだけで素晴らしいのです。そこを出発点にして、何かに挑戦していくほうが心も身体も足元も安定します。

大事な私。大事なあなた。誰も否定できない

ひとつ前の続きのような内容かもしれません。

私が大事な存在であることは、ひとつ前にも書きました。世界中の人が、それと同じように、大事な存在です。そのことは誰にも否定することができない不変の事実です。「お互いに、同じように、大事な存在だね」とお互いを認め合うことは、お互いの尊厳を尊重することです。その出発点から人間関係が始められれば、きっと、安心安全で持続的な関係性が作れます。

私は何だってできる。その責任を引き受ける限り

これは、自己決定の話でもあります。「誰かに迷惑をかけたり、誰かの尊厳や権利を侵害しない限り、何をやってもいい」というのが自己決定というものです。ただし、「何をやるかを決める時には、その結果起こることの責任を引き受ける」というところまでがセットです。そのような考え方に基づいた行動ができるかどうかは、「私もOK、あなたもOK」な人間関係を考えるうえでとても重要なものになります。

あなたはどれが気になりましたか?

10個のキーワードは、見る人によってどれが一番気になるかが違うものであるはずです。一気に10個すべてを自分の行動に落とし込むことは難しいですが、気になった1個か2個をまずは日々の生活に取り入れてみると、「私もOK、あなたもOK」な人間関係を築いていくことができるかもしれません。