【イベントレポート/2023.09.09】第14回世界性の健康デー東京大会

2023年9月9日(土)に第14回世界性の健康デー東京大会が無事に終了しました。

人と人の関係性を分断する恐ろしきウィルスに世界が翻弄された2020年~2022年の間は完全オンラインで開催をしてきた東京大会ですが、今年(2023年)は4年ぶりに会場で開催することができました。

コロナ前の会場開催との最大の違いは、グループディスカッション中心の内容になったことだろうと思います。コロナ禍でオンラインが発展し、トークイベント形式の会はオンラインでも十分という雰囲気が醸成されました。ならばわざわざ集まってやる理由は何なのか?身体と身体を物理的に居合わせる状況で人と会って、他者とのディスカッションを十分にできるプログラムである、というのが東京大会にとっての結論となり、そのような内容の会になりました。

世界性の健康デーとは?
「世界性の健康デー」は、性科学分野の世界最大の国際組織「性の健康世界学会(World Association for Sexual Health)」が提唱する国際デーです。毎年9月4日を「世界性の健康デー」と定め、性の健康(セクシュアル・ヘルス)および性の権利(セクシュアル・ライツ)を推進していくことになりました。9月4日前後に世界中で様々な趣向を凝らした活動が展開されています。2021年には世界で初めて、ポルトガルが「性の健康デー」を国の祝日にしたというニュースがありました。また、中南米を中心に、州単位や自治体単位で「性の健康の日」を採り入れている例がいくつもあるようです。

セッション①性教育の中で同意をどう伝えるか?

最初に「これまで受けてきた性教育の中で印象に残っているもの」や「性教育というもの自体への印象」についてみなさんの考えを聞きました。また、この後のビデオ講義に出てくる「CSE(包括的セクシュアリティ教育)」についても簡単に基礎的な情報をおさらいしました。

そのあと、ギリシャの性教育者であるマルゲリータ・ゲルーキさんのビデオ講義(日本語字幕付き)を視聴しました。

ビデオ講義を受けて、グループディスカッションをしました。
ディスカッション1:動画の感想+各自の自己紹介
ディスカッション2:「同意って結局何だろう?」または「性教育の中で同意をどう伝える?」のいずれかをグループごとに選んで

まとめとして、性の健康世界学会が発表している同意についてのファクトシートから、「同意について考えるためのFRIES」を紹介しました。

それぞれのグループで白熱した議論が行われていたことが印象的でした。

セッション②”権利”という難しそうなものが少し分かるかもしれないワークショップ

セッションの冒頭に、参加者ほぼ全員で「三角形を作るワーク」と通称しているワークをしました。「全員が平等に良くなろうとしたら、周りを見るようになるし、動きはゆっくりになる」ということを体感する目的でした。

このセッションは、同意と切っても切れない関係にある「権利」というものについて考えるセッションとして企画しました。権利に関する理解を進めるためのプログラムを考えていましたが、セッション①の様子を見て、グループで話をする時間をメインにしたほうがいいと判断し、直前に内容を差し替えました。

次の質問を投げかけつつ、みなさんに話し合いをしていただきました。

  • ファシリテーターを務めた柳田がある人から言われた治安の悪い議論(「権利の話なんてしても、相手が理解できなければ、こちらが殴られて痛い思いをする。だったら力で制圧することが正しいのではないか?」という意見)についてみなさんはどう思うか?
  • 権利の反対語は何か?
  • 権利と対になる(≒セットで考えるべき)言葉は何か?
  • 「○○の権利」と呼ばれる権利をチームで1つ挙げて、それが誰の何に貢献しているのかを考えよう

権利という目にも見えない、手でも触れないものに対して、ひとりひとりが感じ考えたことを言葉にする様子は圧巻でした。

セッション③私が見た世界の”同意”事情

#なんでないの プロジェクトの福田和子代表に、豊富な海外経験の観点から、同意に関するお話を聴きました。海外の議論を参照しつつ、同意とは何なのかを解説してもらいました。また、性の健康世界学会と連携して活動しているthe pleasure projectが提唱している「Pleasure Principle(プレジャー原則)」の話も教えてくれました(※福田さんは同プロジェクトのフェローも務めているとのことです)。

性に対してポジティブであることが自分を愛することに繋がっていくと語るプレジャー原則は、これからの日本での性の議論にもヒントを与えてくれるのではないかと思います。

性の健康に取り組む団体のブース出展&資料take freeコーナー

今回は3つの団体のブース出展が実現しました。

  • 日本性科学会(学会雑誌や研修会抄録のバックナンバー等の販売)
  • I LADY.(大学生ピアアクティビストによる活動紹介)
  • 性の健康イニシアチブ(性の健康への取り組みに役立つ書籍の販売)

また、資料take freeコーナーでは、NPOピルコンやジェクス株式会社をはじめとした団体や企業が制作した資料を設置しました。

まとめ

「オンラインが定着した今、会場に集まってもらう以上、オンラインではできない価値あることをやろう」「同意の話、権利の話、尊厳の話は、人から話を聴くだけでなく、他の人と語り合う中で自分の感じていることを言葉にする過程を通じて初めて、深い理解にたどり着けるのではないか」といった話が実行委員会の中であり、今年はディスカッションを中心とした内容にしました。ディスカッションが充実していて良かったという方も、ディスカッションの量が多くて疲れてしまったという方も、様々なお声がありました。

大きなトラブルなく終えることができたのは、ご来場いただいたみなさまのご協力によるものだと思います。ありがとうございました。また、スタッフのみなさんもお疲れ様でした。

世界性の健康デー東京大会は来年以降も開催予定です。ぜひまたお運びください。