【イベントレポート/2026.09.06】第17回世界性の健康デー東京大会

2026年9月6日(日)に第17回世界性の健康デー東京大会が無事に終了しました。

今年は初めて、明治大学駿河台キャンパスのGLOBAL FRONTという施設をお借りして実施しました。

世界性の健康デーとは?
「世界性の健康デー」は、性科学分野の世界最大の国際組織「性の健康世界学会(World Association for Sexual Health)」が提唱する国際デーです。毎年9月4日を「世界性の健康デー」と定め、性の健康(セクシュアル・ヘルス)および性の権利(セクシュアル・ライツ)を推進していくことになりました。9月4日前後に世界中で様々な趣向を凝らした活動が展開されています。

午前のセッション

・「性の健康世界学会」(世界性の健康デーを提唱している国際組織)について
・「世界性の健康デー」について
・「世界性の健康デー」を毎年運営している性の健康イニシアチブについて
・「世界性の健康デー東京大会」のこれまでの取り組みの例
・2026年度の世界共通テーマ「Every Body」について
という内容で、ファシリテーター(当会代表・柳田)からの情報提供と、グループに分かれた話し合いが行われました。

性の健康世界学会とは?

※イベント内で投影したスライドの内容を文字で貼り付けます(記事にフィットするように内容を適宜再編集しています)

英名:World Association for Sexual Health

略称:WAS(「ワス」と発音します。「ワズ」ではない)

1979年設立

性科学分野で世界で一番大きな国際組織

設立当初の「World Association for Sexology(世界性科学会)」と称していた

2005年に「性科学(Sexology)は、性の健康(Sexual Health)を達成するための手段である」という点をより明確に強調することを目的に今の名前に改称

WAS(性の健康世界学会)が近年出した2つの宣言

セクシュアル・プレジャー宣言(2021年)
セクシュアル・プレジャー(定義):他者または個人単独のエロティックな経験から生じるものであり、安全かつ健全に追求されるべきもの
人間にセクシュアル・プレジャーをもたらす経験は多様であり、(それゆえに)プレジャーがあらゆる人にとって肯定的な経験でありつつ、他者の人権とウェルビーングを侵害して得られるものでないことを保障するのが、性の権利である。

セクシュアル・ジャスティス宣言(2025年)
本来誰にでもあるべき権利が侵害されている状態を適切な状態にしていこうという主旨の宣言
脆弱な立場にある人がよりしんどい状況に置かれやすい
「権利の保証」という視点をしっかり踏まえる
あらゆる人に関係する話だという視点を持つ
権利はぜいたく品ではない

世界性の健康デーについて

※イベント内で投影したスライドの内容を文字で貼り付けます(記事にフィットするように内容を適宜再編集しています)

英名:World Sexual Health Day

略称:WSHD

WASが2010年に提唱してはじまった国際デー
普段見過ごしている「性の健康」を改めて考えて推進する日です。
2010年を第1回目として、9月4日を「世界〈性の健康〉デー」に定め、世界各国で性の健康(セクシュアル・ヘルス)および性の権利(セクシュアル・ライツ)を推進していくことになりました。

<WASが掲げる「世界性の健康デー」>

コンセプト(CONCEPT)
性の健康と権利の重要性を国際社会に広めること。

目的(PURPOSE)
健康全体を考える上でも大切な位置を占める「性の健康」について、社会での議論や認識を高めること。
性に係わる問題について話したり、情報や社会的資源にアクセスすることは、あらゆる人々に保障されるべき権利であることを示すこと。

エートス(ETHOS)
主催団体であるWASが掲げる価値と活動目的に沿って、セクシュアリティについての、健康的で責任ある個々人の表現を推進・支援すること。なお、WASはその実践において倫理的かつエビデンスに基づいていることをコミットメントとしています。

活動内容(ACTIVITIES)
公共スペースにおける集会など。

<2020年以降の世界共通テーマ>

2020 Sexual pleasure in times of COVID-19/コロナの時代のセクシュアル・プレジャー

2021 sexual health in a digital world/ネット時代の性の健康

2022 LET'S TALK PLEASURE!/プレジャーについて語ろう

2023 CONSENT/同意

2024 +Relationship/ポジティブな人間関係

2025 SEXUAL JUSTICE WHAT CAN WE DO?/セクシュアル・ジャスティス 私たちにできることは?

2026 Every Body/あらゆる身体

※毎年WASが世界共通テーマを定め、世界中の会員が自身の住んでいる場所で様々な催しを行う。
 東京のようにシンポジウムやパネルディスカッションを行う例もあれば、
 ストリートキャンペーンやる例、
 アートやコメディのネタにして作品を制作する例など、様々。

2010年に当時のWAS会長であったローズマリー・コーツ氏(オーストラリア)のもとで第1回「世界性の健康デー」がはじまりました。

毎年テーマが掲げられており、それらを読み解くことで、この分野が何を訴えてきたかの軌跡をたどることができます。

いまでは、
メキシコのハリスコ州が9月4日を「州・性の健康の日(Día Estatal de la Salud Sexual)」と定めたり、
ポルトガル議会が全会一致の投票で「国家性の健康デー」を制定するなど、
「性の健康デー」は世界に浸透し始めています。

2026年の世界共通テーマについて

世界共通テーマは「Every Body(あらゆる身体)」

「社会の不平等が最も個人レベルで痛感される場所こそが、身体である」
ある人が性の健康、権利、ジャスティス、そしてプレジャーを経験できるかどうかを決めるのは、身体そのものであることは滅多にありません。それは、その身体が生きている「社会(世界)」です。

作られた政策、あるいは作られなかった政策。
誰の痛みが真剣に受け止められ、誰の痛みが退けられるかを左右する権力構造。
誰がケアを求め、誰が遠ざかってしまうかを決定づけるスティグマ(偏見)。

私たちが依存しているシステムの中に組み込まれた前提や思い込み、そしてそもそもそのシステムが誰のために作られたのかという事実です。

性の健康をめぐるシステムや政策、教育は、長年にわたり「どの身体が価値あるものとしてカウントされるか」という極めて狭いイメージに基づいて設計されてきました。

“Every Body” は、その現実に対するWASの回答であり、それを変えていこうという招待状なのです。あえて2つの単語(Every と Body)に分けて書かれているこのテーマには、「すべての人(every person)」 と 「その人が宿す身体(the body they inhabit)」 という、2つの意味が同時に込められています。なぜなら、すべての人が性の健康、権利、ジャスティス、そしてプレジャーを享受する権利があり、それを阻む壁に直面し乗り越えることなしには、そこへ到達できないからです。

(上記はWASの2026年4月のメールマガジンの内容を一部仮訳した内容です)

上記は実施した内容のごく一部ですが、午前の部では、今年の世界共通テーマの意味と意義について共有しました。

またそれを共有するための前提として、「世界性の健康デー」とは何か?、「世界性の健康デーを提唱しているWASとは何か?」についても共有しました。

午後のセッション

午後のセッションでは、この日のグループでの話し合いのために制作したショート動画を観ながら、観て思ったことやそこからどんなことが言えるかなどをグループごとに話し合いました。

制作した動画は上記の5本で、1本は午前のセッションの中で視聴し話し合いをしました。

午後はそれ以外の4本を観て話し合いをしました。
・約2分半の動画を1本観る
・話し合いをする
・グループで出た内容を全体にシェアする
・その話題に対してさらに全体の前で意見を伝え合う
という流れを4回繰り返しました。

動画は性の健康イニシアチブのYouTubeショートまたはInstagramで視聴可能です。
▶YouTubeショート 
▶Instagram

また午後のセッションの最後の課題として、

◎「どの身体が価値あるものとしてカウントされるか」
 ⇒アクセスしやすい人とアクセスしにくい人はそれぞれどんな人?

◎アクセスしにくい人はなぜアクセスしにくい?
 ⇒何があればアクセスしやすくなる?

◎それを踏まえたうえで私たちができることは何か?

◎これらの問いへの回答を織り込みながら、
 「すべての身体が価値あるものであり、すべての人が性の健康、権利、ジャスティス、プレジャーを享受できるようになった状態ってどんな状態なのか?」
 を模造紙に絵で描いてみよう

という、グループで1枚の絵を完成させるワークをやりました。

このワークは過去にもやったことがありますが、

同じ時間を共有してて同じワークをやってきても、

グループごとに出てくる絵がまったく違うという最高の現象が起こります(当然と言えば当然ですが、やっぱり最高です)。

それぞれのグループごとに感じたこと、たどり着いた要点が異なることが最高だと、このワークをやるたびに思います。

参加者からの声

終了後に来場者アンケートに答えていただきました。

アンケートの冒頭で「回答いただいた内容はプライバシーに配慮の上、本実行委員会や関連団体、協賛/後援団体の報告書やニュースレター(すべてWeb上で公開する場合もあり)でご紹介させていただく場合がありますことを予めご了承ください。」とお断りして回答していただいておりますので、いくつかお声を紹介します。

●「司会進行がとてもスムーズで、また内容に没頭できるような形で行われていた。様々な人と意見交換ができたのもとても有意義だった」

●「さまざまなバックグラウンドのかたがたと意見を交換することができました。動画を視聴して議論する進め方がよかったのだと思います。」

●「動画がよかったなぁー。何度もグループ替えをしたこともよかったです。学生さんやいろんな立場の方がおられ、とても良い意見交換ができました。」

●「身体にフォーカスをして人間のことを考えることはあまりなかったと感じました。人間にとって身体はとてもとても大事なもので、一人一人違うはずなのに、一種の決めつけのような視点になっていた気がします。今回を機会に、自分自身が決めつけてしまっていること、思い込んでしまっていることをまた見つめ直したいと思います。」

●「なかなか哲学の観点で性教育を学ぶ時間が少ないので、開催していただけることが本当にうれしいです。」

●「午前中にBODY…身体を捉える上での考え方を説明されていたことで、概念の定義が共有されて話し合いがしやすかったこと。明治大学の学生の方々がとても熱心にディスカッションに参加をされていて、一人ひとり、いろいろな考えを述べられており、その内容に大変刺激を受け、勉強になった。」

●「素晴らしい会を開催いただき、ありがとうございました!またぜひ参加させてください!」

まとめ

ショート動画を観て、それを題材にグループで話し合いをするという形式を初めて取りました。話し合いがとても盛り上がり、「動画を観て話し合う」という進め方の可能性をおおいに感じました。

終了時に、みなさんが充実感をすごく感じてくださっていることが伝わってきて、本当に嬉しく思いました。

今回、明治大学の施設をお借りするにあたり、平山満紀教授に大変お世話になりました。施設をお借りするための交渉や書類のやり取りにご尽力いただいたほか、当日お手伝いいただいた学生さんたちのご紹介もしてくださり、大変お世話になりました。ありがとうございます。

平山満紀先生は、2028年に日本で開催する国際学会「アジア・オセアニア性科学学会」の大会長を務めることが決まっています。性の健康イニシアチブでもサポートしていく予定ですので、続報をお知らせしたいと思います。