
性の健康イニシアチブの前身は「若者世代にリプロヘルスサービスを届ける会Link-R」と言います。
2009年の発足以来11年間にわたり、中高生や大学生、その保護者、学校の先生、地域の大人に向けて、性教育的な発信を行ってきました。
日本は2000年代の初頭に大きな性教育のバックラッシュの波にさらされ、性教育が頓挫したという歴史を持っています。Link-Rが活動を始めた2009年ごろはまだその残り香がくすぶっており、「うちの子に性の話なんてしてくれるな」という時代でした。その逆風的な世論を肌身でひしひしと感じながら活動を続け、やってもやっても広がっていかない、沼の中でもがくような感覚をずっと抱えていたことを今も覚えています。
他方で2018年ごろからなぜか急速に、「性教育」というものに追い風が吹き始めたという感覚もありました。NHKの朝の番組が性教育について発信を始めたり、それにつられるように「性教育の活動をしたい!」という人が急速に増えたり。 「うちの子に性の話なんてしてくれるな」という時代とは隔世の感がありました。
そういった活動家が続々と現れてくる環境の中で、以前のように自身が若者世代に性教育を届けていく必要性を感じなくなっていった一方で、これまでの経験値を次の世代に伝えていくことがこれから必要なのではないかと思い、2021年1月にLink-Rを改組する形で、「性の健康イニシアチブ」を立ち上げました。
性教育に注目が集まる一方で、「性科学」や「性の健康」といった知見はまだまだ知られてさえいません。しかしながら、「性の健康」をベースにした考え方や価値観が日本に広がっていくことで、生きづらさを抱えた人たちを減らせるのではないかと思っています。
「性科学」や「性の健康」 についての情報は英語圏には豊富にありますが、日本語で書かれたものの絶対数は圧倒的に少ないです。それらを日本語で紹介しつつ、 「性の健康」をベースにした考え方や価値観を多くの方に役立ててもらえるように事業を展開していきたい。そのことを通じて、「誰もが自分は自分に生まれてよかったと思う社会」を築いていきたいと思っています。
2021年1月
性の健康イニシアチブ 立ち上げ人/代表
柳田正芳
代表プロフィール
2006年中央大学卒業(専攻は社会学)。在学中の2002年より、日本家族計画協会が活動を支援する若者委員会U-COMにて事務局長。卒業後、企業勤務などを経て、2009年にNPO法人ティーンズサポートの事業事務局長として、渋谷の街の中に「相談と検査ができる街の保健室 ティーンズルーム渋谷店」を出店する事業に参加。同年より、「若者世代にリプロヘルスサービスを届ける会Link-R」として、性教育の分野で、講演/ワークショップ業、執筆業、イベント企画業など。2012年頃から性の健康世界学会(WAS)の活動にも携わるようになり、現在に至る。
プロフィールサイト⇒ https://masayoshiyanagida.tokyo/profile

